売上利益関連基本指標

業務内でも頻出する単語のため、従業員の方にも覚えていただく必要のある単語になります。

MRR (Monthly Recurring Revenue)

MRRもしくは月間定額売上は、月々に入ってくる売上を指します。単発で行ったコンサルティングや開発費は含みません。年間契約の場合は、その契約を12で割るケースが多いです。

補足ですが、単発売上はNRE (Non Recurring Engineering = 一時開発費用)とも呼ばれ、SaaS企業では価値の低い売上とされます。

SaaSビジネスはMRRを積み上げていくストック型のビジネスですが、積み上げ(2種類)と積み下げ(2種類)で4つの種類のMRRがあります。当然ですが積み上げが積み下げを超える事で、MRRがどんどんストックしていきます。

1. New MRR

新規顧客から新規に得られたMRRです。

その月(month)・四半期(quarter)・年(year)に得られた新規のMRRをそれぞれMonthly/Quarterly/Annual New MRRと呼ぶ事が多いです。

2. Expansion/Upsell/Upgrade MRR

既存顧客からのアップセル・クロスセルで得られたMRRです。追加の使用量が発生したり、追加のモジュールやアドオンを購買して頂いて増えるMRRです。

その月・四半期・年に得られた新規のMRRをそれぞれMonthly/Quarterly/Annual Expansion/Upsell/Upgrade MRRと呼ぶ事が多いです。

3. Churned MRR

既存顧客の解約によって失われたMRRです。例えば既存のお客様に月額1000万円の契約をしていただいていたが、次の月に更新が行われない(解約)した場合、月額1000万円分が解約によって失われたMRRになります。

4. Downgrade MRR

既存顧客のダウングレードによって失われたMRRです。例えば既存のお客様に月額1000万円の契約をしていただいていたが、月額800万円の契約に下がってしまう場合、月額200万円分がダウングレードによって失われたMRRになります。

ARR (Annual Recurring Revenue)

ARRもしくは年間定額売上は、年間で入ってくる売上を指します。こちらも同じく、単発で行ったコンサルティングや開発費は含みません。

Average MRR / Average ARR

Average MRR / ARRは全顧客の平均ARR/MRRになります。よくARPU (Average Revenue per User)ARPA (Average Revenue per Account)といった単語も使われますが、MonthlyなのかAnnualなのか必ず確認する羽目になるので、“M” or “A"を全ての指標で明示するのをおすすめします。

CARR (Committed Annual Recurring Revenue)

特にエンタープライズの場合、契約締結から実際にサービス提供をして売上を得られるまでに数ヶ月のラグが発生することが多々あります。CARRもしくは確定年間定額売上はそうしたお客様から得られる見込み売上も足した指標になります。

例えば2020/9/31日に年間1億円の契約締結を行ったが、実際のサービス開始は2021/1/1とします。その場合、2020/10/1時点でのARRはゼロですが、CARRは1億円となります。

また、退会にもラグがあるケースが多いです。例えば契約更新が数カ月後にあるが、顧客が契約更新をしないことを確定させたとします。その場合はCARRからその額を引きます。

また若干ややこしいのが、ARRをCARRの意味で使う人も多いです。状況に応じて確認しましょう。

CARRの成長がSaaS企業者としての一番の目標になります。

ACV (Annual Contract Value) / TCV (Total Contract Value)

ACVは年間の契約金額です。契約が月々の場合は12をかけ、複数年契約の場合は12ヶ月で支払う金額を指します。

TCVは1契約の合計契約金額です。複数年契約の場合、次のリニューアルまでに得られる全ての契約の合計金額を指します (例: 年額1億円3年契約の場合は3億円)。

お客様あたりの平均ACV (顧客平均) という指標はよく使われます。

Gross Margin / Gross Margin Rate

Gross Margin (売上総利益)Revenue (売上)からCOGs: Cost of Goods (売上原価)を引いたものになります。

$$Gross\ Margin = Revenue - COGS$$

例えば売上が1000万円、売上原価が300万円の場合、Gross Marginは1000万円 - 300万円 = 700万円となります。

SaaSビジネスの売上原価には例えば以下のようなものが含まれます。

  • ホスティング費用(例: AWS/Azureやデータセンター費用)
  • 外部ベンダーのライセンス量(例: CDNやモニタリングサービス)
  • サポート費用(例: サポートスタッフ費用)

また、Gross Margin Rate (売上総利益率)という指標も良く使われます。これはGross MarginのRevenueに対する割合で、先程の例ですと(700万円 / 1000万円) * 100 = 70%になります。

$$Gross\ Margin\ Rate = \frac{Revenue - COGS}{Revenue}$$

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